講座情報

令和5年度「地域未来学」講座14 開催報告

日 時:10月7日(土)14:45~15:45
講 師:邑本 俊亮先生(東北大学 災害科学国際研究所 災害人文社会研究部門 認知科学研究分野 教授)
タイトル:「学び手が伝え手になる ~持続可能な災害伝承に向けて~」

昨年に引き続き、邑本先生にご講義いただきました。

前半は、新たな災害伝承の取り組みについてお話しされました。
災害伝承の方法として「語り部」による語りや専門家による出前授業があげられますが、これらの取り組みが、聞き手にどのような影響を与えるかという研究について紹介されました。災害伝承を妨げるものとして、リアリティの欠如、他人事意識、取り組みの単発性をあげられました。これらの課題を解決するために、災害を学んだ人が別の人に伝えるということを循環させる仕組みを作ろうとした取り組みとして、東北大学で全学教育科目として開講されている「基礎ゼミ」での事例を紹介されました。実習や報告会等を織り交ぜたゼミを受講した学生の最終レポートには、震災や教訓を伝えることの必要性と決意が書かれているものが多く、この意識の高さを活かすべく、次のステップとして有志による防災教育イベントの企画を行いました。実際に東京都の中学生向けに出前授業を行った取り組みを、動画を交えて紹介され、こういった事例が広がっていくと良いと話されました。

後半は、今後私たち一人ひとりができることについてお話しされました。主に、「知ること」「育むこと」「忘れないこと」の3点をあげられました。
「知ること」については、災害を知ることと、人間の心理を知ることをあげられ、「経験」や「確かな知識」が必要だが、必要な時に知識を活性化できることが重要であり、災害時は誰しもが受ける「認知バイアス」を振り払う構えが必要であると話されました。
「育むこと」については、災害を生き抜く力を育むことと、災害時に体が動くようにしておくことをあげられました。前者については、被災者からの聞き取り調査や質問紙調査の結果を分析し、リーダーシップや問題解決力など、8つの「生きる力」が必要であるとされました。後者については、特に実地訓練や身体で覚えることの科学的根拠を示されました。

最後に、被災した中学校の様子を動画で紹介しつつ、震災を忘れないために、何度も思い出すことが大事であり、そのために一人ひとりが震災を忘れずに語り継いでいかないといけないと話され、講義を終えられました。