講座情報

令和5年度「地域未来学」講座13 開催報告

日 時:10月7日(土)13:30~14:30
講 師:井上 雅史先生(東北工業大学 工学部 情報通信工学科 准教授)
タイトル:「コンテンツ編集の力を手に入れた先に」

人工知能について研究されている、井上先生にご講義いただきました。

今回の講義のキーワードとして、タイトルを分解し「コンテンツ」「編集」「力」について解説された後、現時点の生成AIの能力について、テキスト生成、画像生成の特徴、また得意不得意の部分について、事例も交えて紹介されました。その上で、コンピュータに指示を出すだけで生成できるため、画像を大量に生成してコンテンツが流通できる現状にあるという問題点を提示し、創作物においては、誰もが容易に制作することができる一助になるのではないかと指摘されました。

この創作物の部分について、「残す・残ってしまう」ことへの責任があるとし、生成AIが生み出すものがコンテンツそのものとしても残り、生成AIの学習データとしても取り込まれる、気楽に作れる一方で、与える影響も大きくなるのではないかと話されました。作ることが簡単になると、作ったものを大事にしなくなる、使い捨てならぬ作り捨てが多くなるという懸念があるとし、また、ある作品を素材とした二次創作によってイメージが増幅され、オリジナルを超える状況も制御できない状況も起こり得る、またそのことを悪いとも思わない風潮になることも考えられるとされました。

その一方、生成AIができないこととして、テレビをはじめとするメディアが生み出す共通体験をあげられ、また、誰が作ったかという創作者の権威性の影響力は変わらないのではないかと話されました。

まとめとして、コンテンツを創作することの貴重さが低下し、創作物を残すことへの心理的なハードルが下がる可能性がある一方、大事なものはコンテンツそのものではなく、創作者の権威といったコンテンツの周辺部分であり、変化が起こらない可能性もあるとしました。また余談として、生成AIがこの講義を担当したらどうなるかを示した後、実際に今回の講義で語られたコンテンツと、語られる可能性があったコンテンツという2つが存在し、世の中に二重性が出てくる部分もあるのではないかとされました。

生成AIによって作られるものが世の中にどのように影響を与えるのか、またその限界はどこかが分かりやすく示された講義でした。