講座情報

令和5年度「地域未来学」講座12 開催報告

日 時:9月30日(土)14:45~15:45
講 師:日野 亮太先生(東北大学 大学院理学研究科 地球物理学専攻 教授)
タイトル:「東北地方太平洋沖の地震科学」

昨年に引き続き、日野先生にご講義いただきました。
冒頭、地震の研究を将棋の対局に例えられ、将棋も定石を学んでいくように、災害も、過去の事例を学びながら備えていくのがこの分野の研究であるとされました。

本題に入り、序盤は東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)がどのようにして起こったのか、発生前後の太平洋側、日本海溝近くの地殻変動のデータを紹介しながら、海底地形の変化について解説されました。また津波被害が大きくなった原因として、波高が高かったこと、波長が長かったことによって波源が広範囲にわたっていたことをあげられました。
この地震は「余効すべり」に大きな影響を及ぼし、余効すべりが未破壊の断層を刺激し、その断層が破壊されたことで地震が発生し、また新たに余効すべりが発生する、といったサイクルが起こっていたと説明されました。

中盤は、現在起こっていることについて、地震前・地震時・地震後の地殻変動について、様々なデータをもとに解説されました。その後、海溝型地震の長期評価での、宮城県沖地震等が発生する可能性や、最近の評価方法、地震発生のサイクル、その際の規模予測の計算について紹介されました。また最近の地震についても地震活動の評価がなされており、プレートの変動等の事象により、東北沖で地震が発生しやすい状況であることが科学的にも説明がつくと話されました。

終盤、現在の津波予測のしくみについて、気象庁がどのような仕組みで予測し、注意報・警報を出しているか、また日本海溝海底地震津波観測網(S-net)や緊急津波速報、さらにスーパーコンピュータを利用した浸水の予測について紹介されました。

講義の最後に、「彼を知り己を知れば、百戦殆うからず」という孫子の言葉を引用され、自然現象をまず理解することが防災において重要であると伝えられ講義を終えられました。