講座情報

令和5年度「地域未来学」講座10 開催報告

日 時:9月12日(火)18:00~19:00
講 師: 畠山 雄豪先生
(東北工業大学 ライフデザイン学部 生活デザイン学科 教授)
タイトル:「ミクロ・マクロな視点から災害対応を考える」

地域防災について研究されている畠山先生に、昨年に引き続きご講義いただきました。

序盤は、規模や居住者構成、生活、生業、文化など、様々な「地域」の写真を示し、地域・まち・都市の景の形成として、建物内部の居住環境からコミュニティ、さらに地区が生まれることで、「表層」が形成され、景観が構成される。地域防災とは、地域についてミクロ-マクロの視点からの取組みではないかと説明されました。

多角的に防災を考える必要があるということで、まずは施設内避難の行動特性について説明されました。利用者属性・滞在時間の違いに応じた避難行動を考える必要があることから、事例として、ホールや商業施設・居住棟を複合した施設での「避難訓練コンサート」の動画やその際の分析結果を示されました。この場合、不特定多数の利用者がいることから、避難時は慌てさせず適切な経路を示し誘導すること、別経路や先行避難等で災害時要援護者への対応が必要であること、また複数階の階段を使用した避難を考えることが必要であると話されました。

続いて、防災意識の変化について説明され、伝承の対象としては、被災した地域の住民、他の地域の住民、その他の社会の担い手と大きく3つに分かれ、伝える相手によって伝承の方法や内容を検討する必要がある、この点を踏まえた事例として、何度も津波の被害を受けている宮古市田老地区でのコミュニティ変遷について、防潮堤ができた影響、さらに震災後の集団移転によって地域毎に意識の差が鮮明になったことについて、調査結果も交えながら解説されました。
また、住民の地区再建の意識向上を背景とした、住民同意による集団移転を進めた女川町竹浦地区のケースについても紹介されました。

終盤は、避難所運営について、当時指定外避難所として機能した高砂市民センター(仙台市内)の事例を基に話されました。指定外避難所期は館長やセンター職員、町内会長、さらに支援者等も関わって早期に運営体制を構築し、集約避難所期に入り避難者による運営に変遷していく経緯に触れ、この事例から特に指定外避難所では、町内会や地域企業、行政からの支援と、それらをまとめる運営リーダーが必要であるとされました。

まとめとして、行動特性を踏まえた避難や誘導の必要性、多様な地域性に対応するだけでなく住民同士の距離感も配慮した検討、発災後の応急対応だけでなく復興後を踏まえた事前計画の必要性、近隣地域だけでなく地方特性を超えた対応体制の必要性について伝えられました。

防災について、人単位から街全体まで、様々な視点から考える必要性を改めて感じる講義となりました。