講座情報

令和5年度「地域未来学」講座8 開催報告

日 時:9月9日(土)13:30~14:30
講 師:香坂 玲先生(東京大学大学院 農学生命科学研究科 森林科学専攻 教授)
タイトル:「里山・有機農業がもたらす生物多様性の未来:地域資源と地理的表示の保護(里山・森林編)」

今回は、生物多様性について研究されている香坂先生にご講義いただきました。
前半は、生物多様性の必要性について、生態系の劣化による影響や地球と経済、人間社会との関係性や生態系から得られる恩恵を、サービスと位置付けて評価する「生態系サービス」の考え方も踏まえてお話しされました。また、自然保護における国際的な流れについても伝えられ、幅広い分野で環境について考えていくネイチャーポジティブ(自然再興)の考え方が大事になると話されました。また、生物多様性にとって大事なエリアである途上国の生産と消費の問題が、私たちの生活にも影響してくるということを認識すべきと伝えられました。

後半は、国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で決まった内容に触れつつ、「C(カーボン単独)からN(ネイチャー)へ」という考え方やグローバルリスクの展望、さらに国内の事例として、自然共生サイトの認定、ゲームを活用して社会的課題解決を図る「ゲーミフィケーション」の事例を紹介されました。

まとめとして、自然や人をポジティブに変えていくためには、国家以外、例えば市民や企業などの役割が増えている分、達成すべき客観的な指標や基準を設けること、あるいは裾野を広げて様々なことに取り組める仕組みを作ることや、国際的な企業だけでなく中小企業の参画も必要であると話され、講義を終えられました。

国際的な部分から身近な地域まで、生物多様性を軸に幅広い視点から自然環境の話題に触れることができる60分となりました。