講座情報

令和4年度「地域未来学」講座22 開催報告

日時:11月26日(土)13:30~15:00
講師:岸本 誠司 先生(東北工業大学 ライフデザイン学部 生活デザイン学科 教授)
タイトル「渚の記憶 — 海洋ごみと寄り物の民俗」
※学都仙台コンソーシアムサテライトキャンパス公開講座

「民俗文化や自然を活かした地域づくり」について研究されている岸本先生に、昨年に引き続きご講義いただきました。第1部は「海ごみ」が世界の課題となるまで、第2部は海辺の暮らしと寄り物の民族、という2部構成によって進められました。

第1部は、主に岸本先生の研究フィールドでもある山形県酒田市飛島に漂着する「海洋ごみ」の視点から、現在の大きな環境課題である海とごみの問題について、データに基づきながら、確認しました。重要なポイントとして、2009年に国内で「海岸漂着物処理推進法」が制定されたこと、2018年にG7サミットで「海洋プラスチック憲章」が採択され、2019年のG20サミットで「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が共有されたことをあげられました。これらを通じ、日本の海洋ごみの問題への取り組みに対し、離島や僻地から活動の連鎖が広まったことを知りました。
また、海とごみの関わりについては、飛島における民間の活動が政府を動かす活動につながった事例を紹介し、グローバルな課題と地域の抱える課題は決してかけ離れたものではないことを学ぶことができました。

第2部では、海辺の暮らしを飛島を例に見ていき、時代の変遷、生業、文化や宗教性について考えました。
飛島は漁業の島として江戸時代から生業を形成してきましたが、昭和初期から2000年代にかけ次第に「暮らし方」は大きく変化しました。人口の減少や都市部への流出などにより、島の中心部にもみられた畑などは少なくなり、現在では森が多くを占め、渚や海岸の環境も大きく変化しました。その中でも生業である漁業には、春夏秋冬の方法、磯ならではの漁具などを巧に使い豊かな海産資源とともに暮らしてきたことが分かります。
渚の記憶の一つとして、海から流れてく流木も生活に燃料として活用することや、海の向こうから信仰の対象がやってくるという思想など海と向き合う暮らし、地の暮らしが生活を支えてきたことが分かりました。

最後に、海洋ごみ問題への取組みを通して、「Think Globary, Act Locally(地球規模で考え、足元から行動せよ)」の思想が社会を変えるためには重要であること、また、信仰世界の場であり、日本人の心性が現われている海岸(渚)での日本人の生活経験を、未来につなげていくべきとし、講義を終えられました。
第一部、第二部を通じ、目の前にある事象、暮らしという現実から、世界をとらえ、考えていくことが重要であることを、事例と共に振り返り確認することができました。