講座情報

令和4年度「地域未来学」講座21 開催報告

日 時:11月22日(火)18:00~19:00
講 師: 畠山 雄豪先生(東北工業大学 ライフデザイン学部 生活デザイン学科 教授)
タイトル:「ミクロ・マクロな視点から災害対応を考える」

地域防災を軸に研究されている畠山先生に、昨年に引き続きご講義いただきました。

序盤、いくつかの写真を掲げながら、規模や居住者構成、生活、生業、文化など、「地域」は多様であるということを示されました。地域・まち・都市の景の形成として、建物内部の居住環境からコミュニティ、さらに地区が生まれ、これにより「まち」が形成され、景観が構成される。このことから、地域防災とは地域についてミクロ-マクロの視点からの取組みではないかと説明されました。

多角的に防災を考える必要があるということで、まずは施設内避難の行動特性について説明されました。利用者属性・滞在時間の違いに応じた避難行動を考える必要があるということで、事例として「避難訓練コンサート」の動画やその際の分析結果を示されました。この場合、不特定多数の利用者がいることから、避難時は慌てさせず適切な経路を示し誘導すること、災害時要援護者への対応が必要であること、複数階の階段を使用した避難を考えることが必要であると示されました。

続いて、防災意識の変化について説明されました。伝承の対象としては、被災した地域住民、他の地域の住民、その他の社会の担い手と大きく3つに分かれ、さらにその中でも多様なケースがあり、伝える相手によって伝承の方法や内容を検討する必要があると述べられました。この点を踏まえた事例として、まず何度も津波の被害を受けている宮古市田老地区でのコミュニティ変遷について、防潮堤ができた影響、さらに震災後集団移転によって地域毎に意識の差が鮮明になった部分について、調査結果も交えながら解説されました。また、住民の地区再建の意識向上を背景とした、住民同意による集団移転を進めた女川町竹浦地区のケースについても紹介されました。

終盤、避難所運営について、仙台市内の市民センターの事例を基に説明されました。館長やセンター職員、町内会長、さらに支援者等も関わって早期に運営体制を構築し、体制が整った後、避難者による運営に変遷していく経緯に触れ、特に指定外避難所では、町内会や地域企業、行政の支援と、それらをまとめる運営リーダーや、少数のリーダーのまとまりが必要であると述べられました。

まとめとして、行動特性を踏まえた避難行動や誘導の必要性、多様な地域性に対応するだけでなく地域住民同士の距離感も配慮した検討、発災後の応急対応だけでなく復興後を踏まえた事前計画の必要性、近隣地域だけでなく地方特性を超えた対応体制の必要性について伝えられ、講義を終えられました。

防災について、人単位から街全体まで、発災直後から復興後まで、細かいところから引いた視点で考える必要性を改めて感じる講義となりました。