講座情報

令和4年度「地域未来学」講座20 開催報告

日 時:11月8日(火)18:00~19:00
講 師: 薛 松濤先生(東北工業大学 建築学部 建築学科 教授)
タイトル:「建築物の耐震性能の向上及びヘルスモニタリングシステム」

構造物の性能や制震装置について研究されている薛先生に、昨年に引き続きご講義いただきました。

序盤、割り箸を例に、割裂といわれる現象について説明されました。割り箸は木の繊維方向に作られており、繊維方向に割れることを割裂といい、割り箸の場合は、箸を割る際に接合部に力がかかることで割れることを説明されました。
この考えをもとに、木質構造が割裂しないためにどうするべきかについて解説されました。木質構造の場合、柱と梁の接合部のところに、穴をあけたりボルトで止めたりすると、割裂が生じやすくなります。割裂を防ぐ方法として、割り箸を糸で止めると割りにくくなるように、接合部を補強することで地震時に割裂を防ぐことができると説明されました。

木質構造は裸眼で見えますが、鉄骨や鉄筋コンクリートなど、裸眼で見えない部分の損傷はどのように見つけるか。その方法として、先生が研究されている構造ヘルスモニタリングシステムを示されました。このシステムは、地震を受けた建物が、その後も使用できるかなどを判定するシステムで、構造物に見えない損傷が生じると、剛性が落ち、揺れの周期が長くなるといった性質を利用し、構造物に設置したセンサ―が地震時の振動(加速度)を計測し、構造の揺れの周期等から構造性能を自動的に解析し、判定するという原理です。本学に設置している機材の画像を交えながら、実際にどのようにシステムが利用されているかを解説されました。
実際にシステムが機能した際の状況にも触れられ、地震の約2分後に、建物に戻れるかどうかがわかることにより、早期に建物の損傷状況がわかるということ、またデータ解析を進めていくことで、長期にわたってその建物の性能がわかり、さらにデータを蓄積することで、資産価値の増減がわかる等、システムの有用性を説明されました。

従来の構造ヘルスモニタリングシステムは、加速度記録から変形角の計算を行うことが多いそうですが、計算法が様々あり、誤差も生じているそうです。現在、変形(変位)を直接観測する方法が各機関で研究されており、本学では画像解析による直接測定を研究しているということで、こちらも実験動画や設置されている画像も交えて解説されました。システムは技術が日々進んでいるが、クリアすべき課題も多く、今後も未来に向けて研究していくとお話しされました。

地震の後の構造物の安全は、社会活動を進める上でも重要な部分です。私たちにとって社会に役立つ技術が進歩している状況に触れる貴重な機会となりました。