講座情報

令和4年度「地域未来学」講座17 開催報告

日時:10月18日(火)18:00~19:00
講師:鈴木 郁郎 先生(東北工業大学 工学部 電気電子工学科 教授)
タイトル「持続可能な社会づくりに欠かせない医薬開発と新技術活用~医薬品の神経毒性評価の取り組み~」

iPS神経の創薬応用について研究されている本学の鈴木 郁郎先生より、ご講義をいただきました。
はじめにiPS細胞の活用例から、細胞移植などの再生医療への応用として、これまで移植手術ではドナー待ちの課題がありましたが、iPS細胞の活用により自身の健康な細胞からの移植や他家移植が可能となるなどの例が紹介されました。
そして、もう一つのiPS細胞の応用分野が薬の開発であり、今回の講義の主題となる創薬開発の新技術について最新の研究紹介を含め講義が進められました。

これまで薬の開発には動物実験が主流でしたが、動物では毒性が無くても人体には影響があるなどの課題、また、化合物の臨床試験において毒性が判明する臓器の割合は中枢神経系が最も高く、これは前臨床試験での中枢神経系の有効な毒性評価法が確立していないことと、ヒト中枢神経系の毒性評価法が無いことが理由として挙げられます。
そこで鈴木先生の研究室では、ヒトiPS細胞由来神経ネットワークを用いた薬効評価系の構築を行っています。
具体的には、電極チップの上にiPS細胞から作った神経細胞を培養し、活動電位を計測するという手法で薬の応答を解析していますが、この解析をAIに行わせる研究も進んでおり、
毒性や薬の種類についての予測結果が高い正答率を示した例も紹介され、今後さらにAIの活用が期待されていると示されました。
また、活動電位だけでなく、精神疾患などにも大きく関わるドーパミンのカーボンナノチューブを用いた計測による新しい創薬開発も試みられており、ドーパミン放出量を指標とした薬剤スクリーニング技術などへの応用が期待されています。

最後に、最新の研究として、脳オルガノイド(iPS細胞から培養した三次元の脳)とCMOS-MEAを用いた新しい計測技術を紹介され、最新のテクノロジーを駆使し化合物が神経細胞に及ぼす影響の研究も進められていると述べられました。
薬以外にも、化粧品などの効果測定などにも導入がされているという紹介もあり、身近な分野でのAI活用の側面を知ることができた60分となりました。


※本講座は、昨年度の「地域未来学」の講座を録画配信したものです。
本レポートについても、昨年度HPに掲載した内容を転用しています。