講座情報

令和4年度「地域未来学」講座16 開催報告

日 時:10月15日(土)14:45~15:45
講 師: 日野 亮太先生(東北大学 大学院理学研究科 地球物理学専攻 教授)
タイトル:「東北地方太平洋沖の地震科学」

地震発生のメカニズムについて研究されている日野先生に、昨年に引き続きご講義いただきました。

前半は、東北地方太平洋沖地震について、当日や前後の動きについて解説されました。
序盤は地殻変動について説明されました。各地の変動量を見ていくと、海陸で大きな違いがあり、海域では南北で大きな違いがあったことが特徴としてあげられると説明されました。さらに詳しく見てみると、陸側の水深が浅くなった部分があることから、地殻変動による地すべりによって地面が隆起した、またそれによって海面が持ち上げられたことにより、巨大津波を誘引したと解説されました。
津波被害を大きくした要因としては、津波が高かったことと津波が奥深くまで侵入したこと、さらに津波が長い時間押し寄せ続け、侵入し続けたことをあげられました。

3.11時には、多様な断層すべりがあったそうです。その一つに震源の周りでゆっくりすべる「余効すべり」があり、「余効すべり」が未破壊の断層を刺激して地震を引き起こし、これらが連鎖して起こったと説明されました。
また、粘弾性緩和という事象については、力の変化に対しゆっくり動くプレートとすぐに反応するプレートがあることにより、より大きな変動を生み出したと解説されました。

続いて東北沖・宮城県沖の今後について説明されました。
宮城県沖地震は、今後30年以内の発生確率が高く、海溝型地震の長期評価では高いランクで位置づけられるそうです。こうした確率を計算する背景として、プレート境界で起こる固着や地震といった動きと経過時間、さらにプレートの「すべり残し」をあげられ、869年の貞観地震等の文献による記述や、堆積物の調査等で、プレート型地震は繰り返し発生するということが裏付けられていると示されました。
宮城県沖と東北地方太平洋沖の地震のサイクルは異なっており、宮城県沖は比較的短い間隔で地震が起こりやすくなっており、さらに余効すべりが発生している最中であることから、次は早く起こる可能性があると指摘されました。

終盤は、津波浸水想定、後発地震注意情報といった最悪ケースを想定した注意情報や、緊急津波速報といった、災害に備えるための予測手段について、仕組みや実際の図をもとに紹介されました。

発生頻度が多くなっている要因や、そこに対する備えをどのように行うか、最近の状況も踏まえてお伝えいただきました。