講座情報

令和4年度「地域未来学」講座14 開催報告

日 時:10月4日(火)18:00~19:00
講 師:大沼 正寛先生
(東北工業大学 ライフデザイン学部 生活デザイン学科 教授)
タイトル;「地域らしい場所~生業景~の未来形をさぐる」

デザインの視点から地域構築を研究されている大沼先生に、昨年に引き続きご講義いただきました。

①「伝えるデザイン」②「生業景の東北」③「地域らしい場所の未来形を探る」という3つの視点を通じ、地域らしい場所とはどういうものか、その意義、未来に対して何ができるかという論点から、お話しされました。

序盤の「伝えるデザイン」では、近代建築の考え方など「地域」と離れているものと、地域の建築の対比から、デザイン、つまり建築が何を伝えるかは、「どのような価値があるか」という視点も重要であり、機能的な価値だけではなく、生業が密接に関わり、地域の醸成価値もあるという視点が重要と示されました。特に東北地方に焦点を当てた場合、地域の生業が密接に関わっていることがあるそうです。

それらがどのような価値を包含しているかについて、「生業景の東北」の項目で地域の事例を見ながら、その意義として「生業」が(造)家と(造)景をつなぐという考え方を示されました。景観に関わる営みは、オフィスワークよりも一次産業や二次産業に係ることが主となるということで、事例として、庄内藩が幕末後の明治初期に、養蚕という生業を軸として景観が醸成された事例を紹介されました。

地域や社会が必要とする生業の場がどう創られるか、そこに新しい歴史や価値が刻まれていく過程に自分が寄与できる部分があるかということを考えていると話されました。そこで、国による競争的資金を獲得しこれらの課題に対してアプローチを試みた経緯が紹介されました。多世代共創社会をデザインすることによる社会の持続性への貢献を研究課題とし、「農山村漁村協働アトリエ群による産業の再構築と多彩な生活景の醸成」という題目で助成を受け、様々な地域の生業景調査や、個々の生業者と生業者をつなぐ「コアトリエ」という概念を実践されました。

終盤、「地域らしい場所の未来形をさぐる」という論点の中で、生業景とは、地域らしい生業がつくる景が連続性のあるものとされました。生業景は、歴史を重ね、未来にもつながる可能性をもっており、そのためには継続と展開の仕組みの導入が必要であり、「伝えるデザイン」を考えるとき、「生業景の東北」として、東北地方の事例から重要性が見えてくる、その際「地域らしい場所の未来形をさぐる」場合、生業景≒地域らしさを見ることができるとまとめられました。
建築物や地域背景、また地域に根付く生業とそこに携わる人等、多様な話題に触れながら、資源豊かな東北の良さとそれを守るためにどのような未来を模索すべきか、限られた時間の中で多くの課題が提示された時間でした。​