講座情報

令和4年度「地域未来学」講座10 開催報告

日 時:9月17日(土)14:45~15:45
講 師: 鈴木 寿則先生(仙台白百合女子大学 人間学部健康栄養学科 准教授)
タイトル:「「健康づくり」は地域社会から」

公衆衛生や社会福祉を専門とされている鈴木先生にご講義いただきました。
健康づくりの視点から地域を考えるということで、公衆衛生とはどのような概念か、また地域とどのように関わるかについて学びました。

初めに健康という側面から、諸外国の事例や国内の健康増進の歴史を振り返りました。
我が国の政策では昭和53年から第一次国民健康づくり運動がスタートし、予防と健康増進が進められ、昭和63年の第二次国民健康づくり運動では、疾病予防からより積極的な健康増進へと進みました。平成に入り、第三次国民健康づくり運動では高齢化・少子化などの社会課題への取り組みと共に、寝たきりや認知症による要介護状態ではない健康寿命の延伸が目標となりました。このような健康づくり運動の移行を振り返り、健康づくりには行政の取り組みが大きく関係していることを確認しました。

様々な取り組みから、平均寿命の延伸が叶いましたが、現代社会では長寿の代償も明らかになったと指摘されました。その上で、寿命の質をどのように日常生活で担保するかについて、歴史的な寓話や各時代の平均寿命などに触れつつ、寿命の質を考えることが重要であり、現代では健康で自立できる期間の伸長が目標となっていると解説されました。
寿命の質を守るためには、身近な疾病との関係が重要であるということを説明されました。かつては成人病と言われた疾病は、現在は生活習慣病という認識に変化し、特に食習慣、運動習慣、喫煙などからくる疾病が大きな課題です。この生活習慣病は、地域社会との関連が非常に近いことが各データから顕著であると紹介されました。喫煙率、脳血管疾患、メタボリックシンドロームなどは各地域の特徴と連鎖する傾向があり、塩分の取りすぎや都市化の問題などが背景にあり、地域ごとの取り組みが欠かせないそうです。

また東日本大震災後の糖尿病患者数や受療率の推移に触れながら、災害もまた地域の人々の健康へ大きな影響を与える要因であることを指摘されました。

このような背景から、健康社会を目指すためには「公衆衛生」という概念が重要だということが強調されました。近代の公衆衛生は社会的対策を意味し、「コミュニティの組織的な努力であり、社会・コミュニティを考えて地域づくりしなければならない」と定義されていることにふれ、講義を終えられました。

SDGsを通じ社会をより持続可能にしていくためには、健康づくりへの取り組みと公衆衛生の概念を通じ、地域づくりがいかに重要であることを認識する貴重な機会となりました。