講座情報

令和4年度「地域未来学」講座9 開催報告

日 時:9月17日(土)13:30~14:30
講 師: 小祝 慶紀先生(東北工業大学 ライフデザイン学部 経営コミュニケーション学科 教授)
タイトル:「地域の未来とエネルギー ~エネルギーから考える地域創生~」

昨年度に引き続き、環境経済学を専門としている小祝先生にご講義いただきました。
地域の経済活動の概要及びエネルギーから地域創生を考えるという2つのテーマにそって、東北の地域GDP、そして地域分散型エネルギーという視点から「地域の未来とエネルギー」について考えました。

前半は、「地域の経済活動を知る」という視点からGDP(地域内総生産)、GRP(域内総生産)について生産・分配・支出を具体的な事例により確認しました。特に、GRPの循環から東北地方ではエネルギー(支出)の域外流出という、地域特有の課題があることを読み取ることができました。

続いて、循環という観点から「地域分散型エネルギー」「地域内エネルギー自給率向上」という2つのキーワードをもとにエネルギーの地産地消について確認しました。
「地域分散型エネルギー」については、カーボンニュートラルの視点が重要ということで、現在、再生可能エネルギー(バイオマス発電や風力、太陽光発電、バイオガス、小水力発動等々)を生み出すための発電技術は実装化までの課題が大きいことがわかりました。
地域分散型エネルギー政策を進めるには、エネルギー自給率を上げる必要があり、自給率を概ね25%まで高めることが求められます。温暖化の解決にも貢献する重要な数字目標ですが、域内エネルギーの自給率(供給源)の問題は日本では大きな課題であると指摘されました。

最後に、今後の施策の展望として新たな水力の可能性についての示唆がありました。
日本はかつて再エネ大国と呼ばれ、1950年代までは日本のエネルギー自給率は約58%に至り、主に水力が担っていました。しかし、水力発電を行うには大型ダムが必要であり、大型ダムには建設や水害への課題もあり現在大型ダム建設は減っています。
未来への着眼点として、地域の河川などを有効活用する小水力のエネルギーへの期待が示されました。地域分散型エネルギーに見合う中小水力に新たな活路を見出すため、中小水力発電の可能性は今後検討の余地があるということでした。

私達の暮らしに欠かせないエネルギーを見える化することは難しいですが、経済活動の指標であるGDPやGRPを知ることで、生産・分配・支出の観点からエネルギーの現状を知ることができます。「今、エネルギーはどうなっているか」を知ることで地域性や課題、そして、エネルギーの地産地消が簡単ではないことが今回の講座を通じ学ぶことができました。