講座情報

令和4年度「地域未来学」講座5 開催報告

日 時:8月27日(土)13:30~14:30
講 師:今村 文彦先生(東北大学 災害科学国際研究所 所長 津波工学分野 教授)
タイトル:「震災から11年を経た地域の復興と新しい防災の取組

津波工学研究の第一人者である、東北大学の今村先生にご講義いただきました。
始めに、東北地方での過去の地震と津波の発生について振り返りました。特に2011年の東日本大震災について、改めて規模や被害の大きさ、津波のメカニズムを、シミュレーション映像も紹介しながら説明され、複合災害であることが被害を拡大させたこと、現在も多くの余震、被害があることを改めて確認しました。近い将来、宮城県沖地震の可能性が示唆されることから、複合災害である東日本大震災の教訓を活かした対策が、非常に重要であることを強調されました。

3.11の振り返りから、現在どのように災害対策が行われているか、伝承や教訓を活かした「3.11伝承ロード」の取り組みについて紹介がありました。
伝承ロードは、学びと地域をめぐる観光の側面から、多様な方を誘う機会の創出を狙い、防災力向上(教訓の伝承)と地域活性化目標(学びの対流)を目標としているそうで、先生からは、多くの方に伝承ロードに訪れて欲しいと呼びかけがありました。

話題は地震・津波だけでなく、近年多発している災害についても触れ、気候変動による温暖化も影響している自然災害だけでなく、熱中症や新型コロナなどの感染症による社会的な災害・人的影響災害なども大きな課題となっています。
先生は、「災害」に対してのリスクは
「・同じ地域でのくりかえりリスク・他の地域でのリスク・未経験のリスク」
の3点に分類できるとし、これらに備えるため、経験・教訓をつなげ、連携した対応・対策の強化、社会の考え方・生活様式を変えていくことが必要との考えを示されました。

また、防災・減災の新たな動きとして、自助・共助・公助等の以前からの取り組みに、新たに加わった『産(業)助』について紹介がありました。事例として、宮城県内や川崎市における取り組みが紹介され、防災からアプリ開発まで幅広連携が紹介されました。

最後に、備え以上のことはできないこと、危機管理と対応計画には最悪想定が基本であり、事前防災の取り組みは被害軽減にはなるがゼロにはできない、また不確実な状況下での判断と対応が必要であり、持続可能な未来のためには『レジリエント社会(回復力)構築への努力』が欠かせない視点あることを、震災の教訓としてまとめられました。

日々の生活では災害の記憶は薄れがちになっていますが、改めて、災害は大地震だけではなく、気候の変化による災害も甚大であるため、災害や防災という視点で普段の学びやBCP対策の意識が重要であることを改めて再確認することができました。