講座情報

令和4年度「地域未来学」講座3 開催報告

日 時:7月12日(火)18:00~19:00
講 師:権 永哲先生(東北工業大学 工学部都市マネジメント学科 准教授)
タイトル:「地震による軟弱地盤の沈下と対策について」

地盤について研究されている権先生に、昨年度に引き続きご講義いただきました。
初めに、地盤はなぜ軟弱になるかを考えるにあたり、砂と粘土の違いについて説明されました。粒の大きさだけでなく、粘性を持っているかで違うということに触れられた後、それぞれの地盤が軟弱になる理由として、砂は密度が低くゆるく堆積すると軟弱になり、粘土は水をたくさん含むと軟弱になるといった特徴を説明されました。

砂地盤で起こる地盤液状化は、飽和された緩い砂質土地盤が地震による振動を受けた場合、粒子の配列が崩れ、粒子が土中に浮遊した状態となる現象をいうそうです。ゆるい砂・地下水・地震動の3つの要素が揃ってこの現象が起こるということを、実際にその様子を模した実験動画や、実際の被害状況の写真も交えて解説されました。被害低減の方法として、前述の3要素のうちどれかを対策をすればよいということで、セメントや薬液使用等のゆるい砂への対策、排水工法等の地下水への対策、また先生が取り組んでいる、砂地盤液状化評価のためのプレッシャーメーター試験装置の開発研究について紹介されました。

一方で粘土は、揺れ等によって土粒子の配列状態が変わり体積が変わる現象が起こりにくいことから、比較的地震に強いそうです。しかし、圧縮する力が強くなるほど、疑似的に密度は強くなるものの、一定値を過ぎるとその強さを失うことが推測されており、実際に東日本大震災時の検証結果についても触れられ、検証方法の精度を高められれば工事の再検討などを提案できるようになるといった、今後の展望についても述べられました。

終盤、減災を考えるにあたり、軟弱地盤に対する4つの考え方として、「回避」、「変更」、「置換」、「改良」というキーワードをあげられました。特に「改良」について日本は特に優れているそうで、砂・粘土それぞれの地盤改良の工法について紹介されました。砂・粘土それぞれの弱点を補い合いながら、地盤工学のエンジニアは日々災害を少しでも減らせるよう努力している旨述べられ、講義を終えられました。

「地盤」「液状化」という普段あまり触れない部分について、専門用語もかみ砕いて話されていたのが印象的でした。災害時に砂や粘土はどのような状態になっているか、工学的にどのような対策を取っているか、受講者にとってもわかりやすい講義でした。