講座情報

令和4年度「地域未来学」講座2 開催報告

日 時:7月2日(土)14:45~15:45
講 師:大場 真先生(東北工業大学 ライフデザイン学部生活デザイン学科 教授)
タイトル:「身近な地域資源として 里山・森林の利活用を通じた地域活性化」

この日の2講座目は、福島をフィールドとして研究活動を続けている大場先生にご講義いただきました。
前半は、福島県奥会津にある三島町の取り組み事例をもとに、森林循環の考え方から地域住民がどのように森林資源を活用しているかという紹介がありました。
福島県三島町は、人口減少が激しい中山間地の小さな町ですが、昭和の頃より地域活性化に力を入れており、観光客誘致への取り組み、工芸品や特産物の高付加価値化に成功してきた一面があるそうです。近年、地域資源として森林資源の地域循環を目指すための取り組みが進められ、薪利用システムを作り、拠点施設の薪ボイラー冷暖房システムに活かしたプロジェクト等の紹介がありました。背景として、森林循環、再生エネルギーの活用に向けた地域循環共生圏推進の協議会があるなど、町をあげての積極的な姿勢が紹介されました。

後半は、環境問題を取り巻く概念的な考え方について、先生自身の考察を述べられました。
近代社会の環境問題の背景である工業化、経済発展、グローバリズムの課題などから、環境問題が世界に認識される歴史的過程に触れながら、地域循環共生圏の捉え方、環境問題にどのようにアプローチするかという考え方について、図をもとに示されました。
アプローチの一つとして、「環境ナッジ」のように考え方の方向性を誘導するようなものがある一方、環境配慮型行動への大きな変化に対しては、それだけでは容易ではないとした上で、どのような知識が人を動かすか、人間が信じる心の在り方の問題にふれ、どのように思いを共有するか、ということの難しさについても触れられました。

まとめとして、地域循環共生圏の課題は、地産地消のメリットをよく理解しているなど、地域にどんな人が必要かを踏まえて人材を育成することにある、持続可能な社会への転換には、インセンティブだけによらず、近代・現代的信念の変革が必要ではないかと述べられ、講義を終えられました。

持続可能な社会への移行について、重要な示唆を得られる事例に触れることができ、また地球環境課題に対しても、自分だけの楽しみや欲求を満たすためだけではなく、社会全体の共生や次世代へつなぐという考え方が示され、非常に興味深い講義でした。