講座情報

令和4年度「地域未来学」講座1 開催報告

日 時:7月2日(土)13:30~14:30
講 師:山田 一裕先生(東北工業大学 工学部環境応用化学科 教授)
タイトル:「みやぎの音風景を守る 北上川河口域のヨシ原再生の取り組み」

今年度の初回講座は、本学地域連携センター長として開会の挨拶をされた山田先生に行っていただきました。
前半は、水辺の資源の一つであるヨシ・ヨシ原を通じ、植生の特性や環境保全との関連について、また人間や地域文化との関わりを通じ、ヨシ・ヨシ原の役割と価値について具体的な解説がありました。ヨシ・ヨシ原は、世界中に分布しており、その特性から多くの地域で人間の生活に欠かせない重要な植物としての歴史が深いそうです。また、ヨシは多くの動植物にとっての生活空間であること、水質浄化能力が非常に高いことから実際に汚水処理の役割を担っている事例があるなど、多様な水性動植物の環境保全においても重要な存在であることが示されました。
国内でも、ヨシ活用の歴史は古く、住環境に密接に関わり建材使用から建具など、その活用の幅広さについても紹介されました。

後半は、東日本大震災による影響を通じ、ヨシ・ヨシ原の課題について触れられました。
震災後の北上川のヨシの再生に至る研究について報告され、3.11によるヨシ原消失は、地盤沈下や高塩分濃度による影響が強かったのですが、研究調査から、かさ上げにより地盤を高くすることで再生に一定の効果があることが分かりました。
一方でヨシ・ヨシ原の活用には、地域文化、地域産業という「生業」との関係が根底にあり、従事者の継承の問題、産業化への課題が大きいそうです。地域との教育的な関わりや関心を集めるための事業をどのように進めるかが今後重要なカギになるとのことでした。

まとめとして、ヨシ・ヨシ原の問題を通じ、環境保全に対して国や企業だけでなく、個人や地域の人も関われる範囲で関わってほしい、自分もやってみようという思いを持ってほしいという思いが伝えられました。

講義を通して、SDGsで該当するキーワードも明示しながら、環境保全を身近な話題として伝えられていたのが印象的でした。環境配慮や循環型社会への移行には、地域の自然資源との上手な共存が欠かせないということを感じる機会となりました。具体的事例として、地域の自然環境からの恩恵や共生を考えるきっかけとして、より多くの方にこのような事例を知っていただきたいと感じました。