地域未来構築事業

地域未来学

令和3年度「地域未来学」講座28 開催報告

日時
12月1日(水)16:45~17:45
講師
菅原 景一 先生(東北工業大学 工学部 都市マネジメント学科 講師)
タイトル
「水による災害を減らすための種を蒔きませんか?」

河川環境や防災減災について研究されている本学の菅原 景一先生にお話をいただきました。
近現代の治水対策として、(1)河道改修(2)洪水調整(3)流域対策(4)氾濫対策(5)水害危機管理の5つの対策をご説明され、日本の河川管理の最前線として、流域治水プロジェクト、立地適正化計画、防災集団移転促進事業を紹介されました。

近現代の治水対策における課題として、河道改修では、予期せぬ局所洗堀、河床低下、土砂堆積、樹林化に気を付ける必要があるほか、現代では、河川が持つ利水機能、治水機能、環境形成機能の3つの機能のほか、想定を超える自然現象への対応が求められています。
では、どうすればよいのかという問いに対して、自然は絶えず変化し続けており、自然の一部である人間も変化し続ける必要がある、一度つくったものは修理、修繕、改良を続けて使い続けることが大事であると述べられました。
このことに絡めて福岡伸一氏の「生命的な建築があるとすれば、壊されること・作り直されることがあらかじめ内包された方法で建築されたもの」という言葉を紹介し、その1つの答えとして、タンザニアの木と土と藁でできた家を取り上げられました。
タンザニアは先生が青年海外協力隊で理数教師として2年間滞在された国で、その暮らしについては講座後半でもご紹介をいただきました。

タンザニアでの暮らしを日本で同様に行うことは出来なくても、現代の方法に置き換えることは出来るとし、それは、自然界に存在し、自然に還る素材を利用して造った構造物を修繕を繰り返しながら使い続けるということ。自然に抗わず、自然の脅威を受け流すために自然界の仕組みに則った社会の仕組みを構築することがこれからは大切になってくると述べられました。
土木での事例としては武田信玄の霞堤や加藤清正の越流堤、中村哲氏の灌漑水路を示されたうえで、「治水と利水は分離されるものではない。ただ洪水防御のためだけでなく、環境問題や地域の問題も一緒に解決してこそ本来の治水だ」という島谷幸宏氏の言葉を紹介されました。

最後に、災害にどう備えるか?自然と災害とどう付き合っていくのか?河川とどう付き合っていくのか?参加された皆さん一人一人が考えてもらえたなら本講座での種まきは成功ですと話され、社会の問題は、そこに暮らす私たちが考えて話し合って決めていかなければならない問題であることを再確認し講義は終了いたしました。

【講義の中でご紹介された書籍】
希望の一滴 中村哲、アフガン最期の言葉(2020)中村哲 西日本新聞社
地域人 第70号(2021)大正大学出版会
幸いをいただきまして このひとときを大切に(2021)塩沼亮潤 株式会社幻冬舎
洪水と水害をとらえなおす(2020)大熊孝 株式会社 農文協プロダクション
虫眼とアニ眼(2008)養老孟司・宮崎駿 新潮文庫
迷走生活の方法(2021)福岡伸一 文藝春秋