地域未来構築事業

地域未来学

令和3年度「地域未来学」講座26 開催報告

日時
11月20日(土)14:45~15:45
講師
永松 伸吾 先生(関西大学 社会安全学部・大学院社会安全学部研究科 教授)
タイトル
「災害レジリエンスとは何か:しごとの復興から考える」

災害を経済面から研究されている関西大学の永松 伸吾先生にお話をいただきました。
はじめに、阪神・淡路大震災後の仮設住宅での孤独死の原因について、失業による生きがいや社会との関わりの喪失という背景があったことを示されました。
こうした被災後の雇用について、建設業への偏りや、外部事業者の介入により被災地の雇用が奪われる問題がありましたが、これらを解決した事例として、新潟県中越地震後に小千谷市で展開された、被災者向けの弁当を地元業者が供給する「小千谷弁当プロジェクト」を紹介され、このプロジェクトはのちに柏崎市でも活用されました。

続いて、東日本大震災後にも導入された、労働対価として金銭的支援を行うCFW(キャッシュ・フォー・ワーク)を解説され、事例として、高齢者等を対象に行商や御用聞きを行う「相馬市買い物支援隊」の事例を紹介されました。CFWの利点として、地域社会に新たな対価が発生し、地域の課題解決や被災者の生活状況の改善が進んだこと、また被災者にとって収入や業務経験が積めた他、誰かの役に立っている、社会と繋がっているという感覚を得られたという点を挙げられました。その一方で東日本大震災におけるCFWの課題として、労働市場への配慮が足りなかったこと、次の雇用機会にどう繋げていくかという支援の必要性、公的資金頼みであるという点を挙げられましたが、このコロナ禍において、公的資金を使わず、就職支援団体が受け皿となった、休眠預金を活用した若者向け雇用創出・就労支援プログラムが実現し、災害復興の中で生まれたCFWの考え方が、その範囲に留まらず有効であることが分かってきたと述べられました。

最後に、災害レジリエンスについて、災害前に戻そうというこれまでのアプローチではなく、事態に対処しつつ新しい状態(new normal)に再適応していくという考えが必要ではないかと述べられ、講義を終えられました。

令和3年度「地域未来学」講座26 開催報告
令和3年度「地域未来学」講座26 開催報告