地域未来構築事業

地域未来学

令和3年度「地域未来学」講座10 開催報告

日時
8月7日(土)14:45~15:45
講師
今村 文彦 先生(東北大学 災害科学国際研究所 所長、津波工学研究分野 教授)
タイトル
「震災から10年を経た地域の復興と新しい防災の取組」

東日本大震災の復興が進む中、私達はこの10年で何を経験として得てきたのか、過去の災害からの振り返りと共に、伝承の取組みや防災への考え方など、新たな歩みについて講義をいただきました。
過去の地震と津波の発生から振り返っても、3.11が経験のない複合災害であったことを研究をもとに示され、東日本大震災の教訓として、我々は備え以上のことは出来なかったと述べられました。
耐震化、関係間協定、防災訓練などは3.11以前から備えがありましたが、津波被害、複合災害対応、大規模捜索と遺体対応、避難所の運営などについては備えが無く、防災意識の低下などの課題もあげられ、このことから、危機管理と対応計画は、複合的災害の発生など最悪のシナリオに基づく必要があると述べられました。

こうした教訓を日本だけでなく世界に伝える活動として、「教訓が、いのちを救う」をスローガンに、今村先生が代表理事を務める(一社)3.11伝承ロード推進機構の取組、活動について紹介がありました。
備えることで救える“いのち”がある、学ぶことで救える“いのち”がある、をメッセージに、産学官の連携により震災伝承をネットワーク化し、東北地方沿岸部の震災伝承施設の整備が進められています。
3.11を「防災教育と災害伝承の日に」として、レジリエンスな社会創出のため、防災教育と災害伝承を考え・取り組み、一層の強化を活動も始まっています。

東日本大震災から10年が経過した現在でも、コロナウイルス、豪雨、台風、噴火など災害は多様であり、社会のシステムを変える必要があるとして、課題と目標が提示されました。
課題は低頻度災害の評価と低減方法、また避難できない現実の改善であり、目標として「人命を守ること、地域を守ること、レジリエンスの向上」が求められています。
レジリエンスとは、備え、対応し、適応する能力であり、しなやかで強靭な、リスクを運用管理する組織の力が望まれると述べられました。

防災・減災の新しい動きである、自助・共助・公助+産(業)助の考えが今後は重要になるとして、民間の力、産業の力の融合が進められている事例の紹介がありました。
東北大学災害科学国際研究所とイオン環境財団との連携や、大学と自治体、企業が取り組むプロジェクトの紹介もあり、産学連携協力によるレジリエント・コミュニティー創成に向けて動き出しているということでした。

最後に、東日本大震災の教訓として、私達は「備え以上のことは出来ない事」、そのために「危機管理と対応計画は最悪のシナリオに基づく必要があるということ」。また、「事前防災は確実に被害を軽減できるがゼロにはできないため、レジリエント社会(回復力)の構築が必要であること」をまとめとして述べられ、被害を繰り返さないという思いを行動にし、国民全体の防災力向上のために、ともに歩んでいきましょうと締めくくられました。

令和3年度「地域未来学」講座10 開催報告
令和3年度「地域未来学」講座10 開催報告