地域未来構築事業

地域未来学

令和3年度「地域未来学」講座7 開催報告

日時
7月17日(土)13:30~14:30
講師
香坂 玲 先生(名古屋大学大学院 環境学研究科 教授)
タイトル
「里山・有機農業がもたらす生物多様性の未来:地域資源と地理的表示の保護」

地理的表示の活用と有機農業の視点から、“持続可能な地域づくりへの効果”について講義をいただきました。

地域には様々な産品(加工品、野菜、漆や伝統的な工芸品、お茶、畳など)があり、それらは、地域産物であることに加え、「伝統資源」であり地域の「文化や歴史」、そして、「生態系」にも影響を与えるという関係性の理解が必要です。

地域のブランディング戦略(地域の活性化の一つの方法)としてGI(地理的表示)を活用しようという考え方は、土地利用や景観管理と地域の産品の活用により、生物多様性を担保した持続可能な地域運営に役立てようというものです。

GIと地域団体商標にはいくつかの相違もあり、地域の事例からGIの活用と地域団体商標の活用を紹介され、GI制度の活用の効果としては、地域の意識の醸成、文化の共有、知識の共有化、地域の誇りや生産者の意識改革、後継者の出現などに結びついているという結果が報告されました。

有機農業の視点では、脱炭素目標と食料のシステム運用の面から、有機農業の戦略的活用がもたらす欧州の例を参考に、ドイツの昆虫保護の視点や、有機農業の地球温暖化防止効果について新しい世界情勢を紹介され、日本の政策としては「みどりの食糧システム戦略」を掲げ、2050年までに目指す形が紹介されました。

この戦略では、気候変動に対応した農林水産業の推進、スマート技術の応用、持続可能な生産、消費の推進が取り組みの課題として挙げられています。

欧州に比べ、まだ有機農業のシェアが低い有機農業ですが、川上から川下(生産者から消費者までの流通をと捉える段階的仕組み)への取り組みが今後必要になるということでした。

有機農業の認知や消費者への意識の醸成については、自治体の取り組みが主体となり、小売店や、スーパーの役割、給食導入の取り組みなどが重要であるとの紹介もありました。

身近なGIの産物や、有機農業生産物に触れる機会を日常でも探しながら、生活の中に取り入れていくことで、持続可能な地域の育成につながるのだと述べられました。

令和3年度「地域未来学」講座7 開催報告
令和3年度「地域未来学」講座7 開催報告