講座情報

令和5年度「地域未来学」講座19 開催報告

日 時:11月14日(火)18:00~19:00
講 師: 郷古 雅春(宮城大学 事業構想学群 事業構想学研究科 副研究科長・教授)
タイトル:「サステイナビリティの視点からみる世界農業遺産「大崎耕土」の水管理の知恵と価値」

農業・農村、水資源について研究されている郷古先生に講義いただきました。

序盤、世界農業遺産(FAO)についての説明があり、世界文化遺産(UNESCO)と比べ未来志向であり、進化する知恵の遺産であることや、「大崎耕土」を含め、国内には15の地域がFAOに認定されているといった点を説明されました。
大崎耕土は、「やませ」による冷害、急な山間地のため渇水しやすく、水はけの悪い平地であるため洪水が発生しやすいといった悪条件に様々な工夫で適応し、豊かな水田農業地帯になっていることが評価され世界農業遺産となりました。評価されたポイントとして、水管理基盤、伝統的な社会組織「契約講」による人々のつながり、「居久根」と水田、水路がおりなす豊かな生物多様性をあげられ、各項目について詳しく説明されました。
水管理の部分では、画期的な取組として、水田を地域防災として利用する「田んぼダム」の事例について紹介されました。「契約講」の部分では、各農家が参加型で農業水利管理を行っている点を説明されました。

終盤、大崎耕土の「質」を形作っているのは、農業システムの基盤となっている農業用水の管理システムであり、今後はサステイナビリティにしていく必要がある、つまり何をまもり、つくり、つなげていきたいのかを考えるべきでとした上で、大崎耕土のシステムとその基盤となる水管理を如何に次の世代につなげていくかは、日本の農業や地域の持続可能性への問いでもあると話され、講義を終えました。